スリランカ仏教について

上座部仏教

インドの釈迦牟尼仏陀を開祖とする仏教は、時代の変遷とともに各地に普及していきました。日本、中国、チベットなどへは、北伝と称される大乗仏教が主に広まり、スリランカ、ミャンマー、タイなどには南伝、すなわち上座部仏教(テーラワーダ)が伝播しました。
テーラワーダとは、「長老の教え」という意味を表し、仏陀の入滅後、長老たちによる結集で編纂されたパーリ語の三蔵経(経、律、論)を継承しています。
今も仏陀の教えを原型に近いかたちで受け継ぎ、瞑想なども実践しています。

スリランカ人にとってのお寺の役割って?

スリランカ人は仏教を基盤に生活しています。誕生日や結婚、特別な試験など、人生におけるさまざまなイベントの前に、人々はお寺を訪れます。僧侶にその時に応じたお経を唱えてもらうためです。たとえば、出産前には元気な子供が生まれるように願って、アングリマーラという特別な御経を唱えます。また、出産後に赤ちゃんが最初に外出する先もお寺です。生まれてから亡くなるまで、お寺は人々の生活に密に関わってきます。

子供たちの学び場『日曜学校』

子供たちが仏教を学ぶために、スリランカ各地のお寺では日曜学校が開かれます。そこでは、両親や目上の人たちを敬う大切さや社会の在り方など、仏教に基づいてシンプルに生きていく方法を勉強したり、瞑想を行ったりします。

聖なるお守り

スリランカでは、僧侶がお経を唱えながら『ピリット・ヌーラ』という白い糸を信者の右手に巻く儀礼があります。また、お経を唱えた『ピリット・パン』という水を飲むこともあります。いずれも幸福を願うためのものです。また、釈迦は菩提樹の下で悟りを開いたとされますが、スリランカのお寺にも菩提樹があります。人々は菩提樹の隣で瞑想を行ったり、白い布の中に銅のコインをいれて菩提樹に巻くことで、「私は~をします」と神様と約束を交わしたりします。

毎月お休みになる満月の日

満月の日(ポヤデー)は、スリランカ人にとってはお寺参りをする神聖な祝日です。この日はお肉類やお酒の飲み食いはせず、ゆっくりと体を休めます。なかでも5月のポヤデーは特別で、釈迦の生誕と成道、涅槃を同時にお祝いするウェッサック祭が開かれます。このウェッサック祭は蘭華寺でも開催され、駐日スリランカ大使をはじめ、多くの在日スリランカ人や日本人がお祝いに訪れます。

『光り輝く島』を意味するスリランカ

ココナッツの木を中心とした鮮やかな花木に囲まれたインド洋に浮かぶ島国です。町を歩けば、至るところでリスやトカゲなどの野生動物に出くわします。この豊かな自然のもとで生きる人々の多くは、上座部仏教を信仰しています

スリランカのお葬式

スリランカのお葬式は自宅で執り行われます。また、亡くなって7日、1ヵ月、3ヵ月、1年に供養を行い、このときはお寺に行ったり、自宅に僧侶を呼んだりします。7日目の供養(自宅)では、6日夜に僧侶1人が遺族に対して説法(バナ)をし、翌朝10人以上の僧侶を招いて『布施』として食事を与えます(作った食事は、最初にお釈迦様へお供えしています)。このときにも説法があります。お葬式での説法では、「亡くなった人の生き方を手本にして、今世でよりよく生きなさい」というように、生きている人に対する話がなされます。宗教やお寺は亡くなった人のためではなく、生きている人のために存在するのです。

先祖供養とお墓の考え方

多くのスリランカ人には『お墓参り』という考えがありません。亡くなったら、遺骨は『ただのものになる』と考えるためです。スリランカにあるお墓の多くは、キリスト教徒が作ったものです。一般的に、田舎は土葬、都会は火葬が多く、家の一角に遺骨を埋めるなどします。お墓の前で供養はしませんが、イベントなどの後には必ずお釈迦様とご先祖様に対する感謝の気持ちを述べる習慣があります。また、在日スリランカ人も同様に、日本でお墓を建てることはなく、国へ遺骨を持って帰ることが多いようです。蘭華寺には、在日スリランカ人の遺骨を一時的に保管する納骨堂もあります。